第8話:相場のリズムを測る「エリオット波動理論」
相場はランダムに動いているわけではなく、大衆心理が織りなす「一定のリズム(周期)」を持っています。第8話では、この相場のリズムを波の数でカウントし、現在地と未来の予測を立てるためのフレームワーク、「エリオット波動理論(Elliott Wave Theory)」を解説します。
1930年代にラルフ・ネルソン・エリオットが提唱したこの理論は、ダウ理論の「トレンドには3つの波がある」という概念をさらに細分化し、数学的な規則性を持たせたものです。
基本原則:相場は「5波で進み、3波で戻る」
エリオット波動理論の最大の核心は、「相場のメインのトレンドは5つの波(推進波)で形成され、その後の調整トレンドは3つの波(修正波)で形成される」という法則です。これを「基本の8波サイクル」と呼びます。
- 推進波(第1波〜第5波): メインのトレンド方向に進む波です。1波、3波、5波がトレンド方向へ進み、2波、4波が一時的な逆行(押し目・戻り目)を作ります。
- 修正波(A波〜C波): 5波のトレンドが終了した後に発生する、トレンドとは逆方向の波です。A波で下落、B波で一時的に反発し、C波で再び大きく下落して調整を完了させます。
絶対に破ってはいけない「3つのルール」
実際のチャートは複雑であり、どこからが第1波なのか数え方(カウント)に迷うことが多々あります。しかし、エリオット波動には「これを満たさなければエリオット波動とは認められない」という厳格な3つのルールが存在します。プロはこのルールが崩れた瞬間にカウントをリセットします。
- 原則①:第2波は、第1波の始点(スタート地点)を超えて逆行することはない。
(上昇トレンドの場合、第2波の押し安値が、第1波の最安値を下抜けることは絶対にありません。下抜けた場合、それは第2波ではなくダウ理論における単なる下降トレンドの継続です。) - 原則②:第1波、第3波、第5波の中で、第3波が一番短くなることはない。
(通常、相場に大衆が一番多く参加して最も勢いづくのが第3波であるため、第3波が最も長くなる傾向があります。) - 原則③:第4波の安値は、第1波の高値と重なることはない。
(上昇トレンドの場合、第4波の押し目が、第1波の天井(高値)の価格帯まで落ちてくることはありません。重なった場合、そのカウントは間違っていると判断します。)
波をカウントする際は、自分の都合の良いように線を引くのではなく、この3つのルールに矛盾が生じていないかを常に事実ベースで確認する必要があります。
フラクタル構造:波の中には小さな波がある
エリオット波動のもう一つの重要な事実が「フラクタル構造(入れ子構造)」です。
たとえば、週足チャートで見える巨大な「第1波(推進波)」を、1時間足チャートに拡大して細かく見ると、その1本の波の中には「小さな5波(1〜5)」が形成されています。
逆に、巨大な「第2波(修正波)」を拡大すると、その中には「小さな3波(A〜C)」が形成されています。
このように、マクロの波もミクロの波も全く同じ法則のフラクタル構造で動いているというのが、エリオット波動理論の全体像です。
おわりに:波の「終点」をどうやって予測するか?
エリオット波動理論により、現在が「第3波の真っ最中だ」あるいは「次は第4波の調整が来る」といった相場のリズムが読めるようになりました。
しかし、「では、その波は具体的に『いくら(価格)』まで伸びるのか?」という疑問が残ります。この波の長さと終点を数学的に導き出すためにエリオット波動と必ずセットで使われるのが、自然界の法則を応用した分析手法です。
次回、第9話では、波の押し目と限界値を正確に測る「フィボナッチ・リトレースメントとエクスパンション」について解説します。お楽しみに!
