第4話:【好況期】に買われるセクター(資本財・素材・エネルギー)

経済が本格的に過熱し、物価が上昇し始める「好況期」において、どのような業種に資金が向かいやすいのか、そのメカニズムを解説します。

1. 好況期(Expansion)の経済環境とは

好況期は、回復期を経て企業の業績が絶好調になり、社会全体の需要が供給を上回る時期です。景気の過熱による物価上昇(インフレ)を防ぐため、中央銀行は金融引き締めへと舵を切ります。

【好況期の基本的なパラメーター】

  • 金利: 上昇傾向(インフレを抑えるため、中央銀行が利上げを開始・継続する)
  • 企業業績: 多くの企業が最高益を更新し、積極的な設備投資を行う
  • 物価(インフレ): 需要の増加と供給の逼迫により、モノやサービスの値段が上がり続ける

このフェーズでは、金利上昇によって割引率が大きくなるため、ハイテク株などのグロース銘柄は株価が上がりにくくなる逆風を受けます。一方で、インフレと活発な経済活動そのものを直接的な利益に変換できるセクターへと資金が移動(ローテーション)していきます。

2. 好況期に買われる3つのセクターとその理由

この環境下において、構造的に売上が拡大し、利益率が高まりやすいのが以下の3セクターです。

① 資本財(機械・建設・商社など)

景気が良くなり企業の懐が潤うと、自社のさらなる成長のために「設備投資」を大きく増やします。
工場を新設したり、新しい製造設備や物流システムを導入したりするため、建設機械、産業用ロボット、インフラ整備などを手掛ける企業(BtoB企業)の受注が急増します。企業間の取引が最も活発になる恩恵を直接受ける構造にあります。

② 素材(鉄鋼・化学・非鉄金属など)

モノが大量に作られ、工場やビルが次々と建てられるようになると、その基礎材料となる鉄鋼、化学製品、銅やアルミなどの需要が世界中で急拡大します。
さらに、好況期特有の「インフレ(物価上昇)」によって素材そのものの市場価格が引き上げられるため、企業は販売価格にコストを上乗せしやすく、利益幅(マージン)が拡大しやすいという強力な特徴を持ちます。

③ エネルギー(石油・天然ガスなど)

経済活動がピークに達すると、工場をフル稼働させ、大量のモノを運び、人々が活発に移動するためのエネルギー消費量が最大になります。
需要の急増に対して供給が追いつかなくなることで、原油や天然ガスなどの資源価格が高騰します。エネルギー企業の利益は資源価格に直接連動する構造となっているため、インフレと資源高の局面において最も強い耐性と上昇力を見せます。


3. 次回のテーマ:後退期・不況期に買われるセクター

景気の過熱を冷ますための「利上げ(金利上昇)」は、やがて企業の資金調達コストや個人のローン負担を重くし、経済の強力なブレーキとして働き始めます。これによって経済活動が縮小に向かうのが、次のフェーズです。

続く第5話では、景気がピークを越えて減速し始める「後退期」および、どん底の「不況期」において、資金の避難先として買われるディフェンシブセクターの仕組みについて解説します。