第2話:景気と金利のサイクル(なぜ主役が交代するのか)
セクターローテーションの主役が交代する背景には、経済全体の波である「景気循環(ビジネスサイクル)」と、それに深く関わる「金利」の動きがあります。今回は、なぜ景気が循環し、金利が変動することで特定のセクターが有利になるのか、その純粋なメカニズムについて解説します。
1. 景気循環(ビジネスサイクル)の4つのフェーズ
経済活動は、常に一定のペースで成長し続けるわけではありません。歴史的に見ても、好景気と不景気を繰り返す波が存在します。この波を景気循環と呼び、一般的に以下の4つのフェーズに分類されます。
景気循環の4つのフェーズ
① 回復期 (Recovery)
不況の底を打ち、企業の業績が徐々に上向き始める時期。金利は低水準で推移することが多い。
② 好況期 (Boom / Expansion)
景気が力強く拡大し、企業の売上や利益がピークに向かう時期。インフレが進行しやすく、中央銀行は利上げ(金利上昇)を検討し始める。
③ 後退期 (Downturn)
景気がピークを越え、成長の鈍化が見られ始める時期。高水準の金利が企業の業績や消費を圧迫し始める。
④ 不況期 (Recession / Slump)
経済活動が停滞し、企業の業績が悪化、失業率が上昇する時期。中央銀行は景気を刺激するために利下げ(金利低下)を行う。
2. 中央銀行の利上げ・利下げと、金利がセクターに与える影響
景気循環をコントロールするために重要な役割を果たすのが、中央銀行(日本の日銀、米国のFRBなど)です。中央銀行は、景気の状況に合わせて「金利」を調整します。
この金利変動こそが、セクターローテーションを引き起こす最大の要因(構造的な理由)です。
【金利と株価の基本的な仕組み(割引率の概念)】
株価は、その企業が将来稼ぐ利益を現在の価値に直した(割り引いた)ものの合計です。
金利が上がると、「将来の利益を割り引く割合(割引率)」が大きくなるため、計算上の現在の株価は低く見積もられやすくなります。特に、将来の大きな利益成長を織り込んで株価が形成されている「ハイテク株(グロース株)」ほど、金利上昇による割引率の影響を強く受けて株価が下落しやすいという構造があります。
逆に、金利が下がれば、割引率が小さくなるため、ハイテク株などの理論的な株価は上昇しやすくなります。
【金利と業績の仕組み】
金利の上昇は、企業の資金調達コスト(借金の利子)や、個人が住宅ローンを組む際のコストを増加させます。これにより、借金の多い企業や、住宅、自動車などの「一般消費財セクター」の業績は圧迫されます。一方、銀行などの「金融セクター」は、貸出金利と預金金利の差(利ざや)が拡大しやすくなるため、金利上昇は業績面で有利な構造となります。
3. 次回のテーマ:回復期に買われるセクター
景気循環と金利変動の仕組みが整理できました。「景気循環の4つのフェーズ」と「金利」の組み合わせによって、どのセクターが恩恵を受けるか決まる、というのがセクターローテーションの純粋な構造です。
続く第3話からは、各フェーズ(回復期・好況期・後退期・不況期)において、実際にどのセクターが買われやすいのか、その理由を一つずつ解説します。まずは、不況の底から金利が下がり、景気が上向き始める「回復期」に強いセクターについてです。
