第11話:【日経平均】オプション手口の見方とは?海外機関投資家(アムロ・GS)の建玉から相場を読む

第2章では、アイアンコンドルやリスク・リバーサルなど、プロが使う「武器(戦略)」の使い方をマスターしました。
しかし、どれほど強力な武器を手に入れても、「どこに向かって撃つか(どの価格帯に仕掛けるか)」が分からなければ、相場という戦場では生き残れません。

相場はランダムに動いているわけではありません。日経225オプション市場には、莫大な資金力で相場を動かし、特定の価格帯に「見えない壁」を構築している巨大なプレイヤーたちが存在します。それが、海外機関投資家です。

本記事からは第3章(相場分析編)として、彼ら巨大資本がどこに陣地を築いているのかを示すデータ、「手口(てぐち)」の読み解き方を解説します。これを極めれば、あなたのトレードは「ギャンブル」から「確率論に基づく狩り」へと劇的に進化します。

「手口」とは何か?相場を支配する巨大なクジラたち

株式市場や先物・オプション市場において、どの証券会社(投資家)が、どの価格帯で、どれくらいのポジション(建玉)を持っているかという内訳データのことを「手口(てぐち)」と呼びます。

日経225オプション市場は、取引シェアの大部分を海外の機関投資家が占めています。特にオプション市場において、相場の方向性や壁の形成に多大な影響を与えるのが以下の2大プレイヤーです。

  • ABNアムロ・クリアリング(アムロ): オプション市場における圧倒的なシェアを誇る。大量のポジションを機敏に動かし、相場を派手に掻き回す「相場の暴れん坊」。
  • ゴールドマン・サックス(GS): 取引回数はアムロほど多くないが、一度巨大なポジションを構築すると、強固な「鉄壁」として相場をがっちりと支えたり、叩き落としたりする「相場の支配者」。

彼らがどこに「コール売り(天井)」や「プット売り(底)」を仕掛けているかを知ることができれば、第2章で学んだ戦略を極めて有利な位置に配置することができるのです。

初心者が陥る罠:「出来高」を「建玉」と勘違いする

手口データを分析する上で、最初に公表データを見るときによく引っかかる罠があります。
それは、日次データで公表される「出来高(取引高)」を「建玉(現在持っているポジション)」だと勘違いしてしまうことです。

JPXが公表する日次のオプション手口データ(手口上位一覧)には、「取引高(Volume)」しか記載されていません。

例えば、「アムロが60,000円のコールを1,000枚取引した(出来高1,000枚)」と公表されたとします。
これを見て、「アムロが1,000枚も買い越した!相場が動くぞ!」と勝手に方向を決めつけて興奮します。しかし、これは完全に間違いです。

なぜなら、公表された「1,000枚」という取引高は、以下の4つのパターンのうちどれなのか全く分からないからです。

  • 新規の買い(新たに買う権利を持った)
  • 新規の売り(新たに売る義務を負った)
  • 決済の買い戻し(持っていた売りポジションを解消した)
  • 決済の転売(持っていた買いポジションを解消した)

つまり、日次の出来高だけを見て「アムロが買った!売った!」と方向感を語るのは、根本的に間違っているのです。「出来高は出来高であり、建玉ではない」という大前提を絶対に忘れないでください。

当サイトの「手口分析ツール」とJPXデータの見方

日本取引所グループ(JPX)は、毎日・毎週、取引状況を公表しています。しかし、これを個人投資家が毎日手作業で集計するのは面倒です。

そこで当サイトでは、JPXが公表するデータを集計し無料公開しています。分析の際は、以下の3つのデータを組み合わせて相場の現在地を読み解きます。

① 【週次】オプション建玉マップ(参加者別の正確な残高)

週末時点での「誰が、どこに、どれだけのポジションを保有しているか」を示す正確なベースマップです。

  • 集計対象: JPX公表の週次「取引参加者別建玉残高」に基づき、週末時点の正確な残高を反映。
  • 更新タイミング: 毎週第1営業日(通常月曜日)の夕刻以降に更新。
  • 公開範囲: ATM(現在値に最も近い権利行使価格)を中心に、上下2本ずつの範囲のみ開示。

② 【日次】オプション建玉マップ(市場全体)

特定の証券会社ではなく、「市場全体でどれくらいのポジション(建玉)が残っているか」を毎日確認できるデータです。特定の価格帯に建玉が異常に積み上がっている場合、そこが強固な壁になる可能性が高まります。

  • 集計対象: JPX公表の日次「デリバティブ建玉残高表」に基づき、市場全体の残高を反映。
  • 更新タイミング: 毎営業日の20:00頃(JPXのデータ公表後)に最新データへ更新。

③ 【日次】オプション出来高(参加者別の日々の取引量)

各プレイヤーが日々「どれくらい活発に取引したか」を示すデータです。買いか売りかは分かりませんが、相場の熱量や注目している価格帯を測る指標になります。

  • 集計対象: JPX公表の日次「手口上位一覧」に基づき、日中/ナイトの立会取引およびJ-NET取引高を合算。
  • 表示制限: 報告義務のある上位社のみの合計値であり、市場全体の総取引高ではありません。公表されているのは「取引高」です。
  • 更新タイミング: 翌営業日の夕刻以降に最新データへ更新。

▼ 手口分析ツールのブックマークはこちら

日々の分析には欠かせないツールですので、ぜひ以下のリンクから実際のグラフを確認しながら、本連載を読み進めてください。

次回【第12話】では、オプション市場における「売り手」の絶対的な力と、手口データからレジスタンス(上値抵抗線)やサポート(下値支持線)を見つけ出す具体的なメカニズムを解説します。お楽しみに!