第6話:投資信託の積立を始める具体的な3ステップ
前回の第5話では、投資の利益にかかる約20%の税金を合法的にゼロにする国の制度、「NISA(ニーサ)」と「iDeCo(イデコ)」について解説しました。
流動性が高く、生涯で1,800万円の非課税枠があるNISA口座をメインの土台として活用するのが基本戦略となります。
理論と制度の理解は完了しました。第6話では、実際にNISA口座を使ってインデックスファンドの積立設定を完了させるまでの「具体的な3ステップ」と、データに基づいた「推奨銘柄」を事実ベースで解説します。
ステップ1:ネット証券で「NISA口座」を開設する
第4話でお伝えした通り、窓口のある銀行や総合証券会社は手数料が高いため選択肢から外します。必ず、維持費が無料で信託報酬の安いファンドを多数取り扱っている「ネット証券」を選びます。
現在、国内のネット証券において、手数料の安さ、商品の充実度、システムの安定性から見て、以下の2社から選べば安心です。
- SBI証券: 国内口座開設数トップ。ポイント還元率の選択肢が多く、長期的なサービス拡充に定評があります。
- 楽天証券: 画面の操作性が非常に分かりやすく、普段から楽天経済圏(楽天市場や楽天カード)を使っている人にとって最大のメリットがあります。
どちらを選んでも運用成績に差は出ません。ご自身の使いやすい方の公式サイトから、「総合口座」と「NISA口座」の同時開設を申し込みます(スマートフォンとマイナンバーカードがあればオンラインで完結します)。
ステップ2:積み立てる「インデックスファンド」を選ぶ
口座が開設されたら、NISAの「つみたて投資枠」で購入する商品を選びます。
数千本ある投資信託の中から私たちが選ぶべき条件は、「信託報酬(手数料)が0.2%以下であること」と「広範囲に分散されたインデックス(市場平均)であること」の2点のみです。
この条件を満たし、現在最も多くの投資家に支持されている業界最安水準のパッケージ商品が、三菱UFJアセットマネジメントが提供する「eMAXIS Slim(イーマクシス スリム)」シリーズです。
その中でも、以下の2つのどちらかを選ぶのが現在の最適解とされています。
① eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
通称「オルカン」。これ1本を買うだけで、日本を含む先進国・新興国など世界約50ヶ国、約3,000社の株式に分散投資ができます。信託報酬は驚異の「年率0.05775%(2024年時点)」です。
【メリット】 時代に合わせて「今成長している国」の比率をプロ(システム)が自動で入れ替えてくれます。「今後どの国が覇権を握るか」という予想を完全に排除し、地球全体の経済成長に丸乗りできる、最も理にかなった商品です。
② eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
アメリカを代表する主要企業500社に分散投資する商品です。信託報酬は「年率0.09372%(2024年時点)」です。
【メリット】 過去数十年にわたり、アメリカ経済は世界を牽引し、全世界株式を上回るリターンを出してきたという歴史的事実があります。今後も「アメリカ一強」が続くと判断するなら、こちらが候補になります。
ステップ3:毎月の「積立金額と決済方法」を設定する
商品を決めたら、最後に「毎月いくら買うか」と「どうやって支払うか」を設定します。
【重要】必ず「積立買付」のボタンから進むこと
証券会社の購入画面には、初心者がつまずきやすいシステム上の仕様があります。商品ページには通常、以下の2種類の購入ボタンが用意されています。
- 金額買付(スポット購入): 今ある資金で1回だけ買う設定。NISAの「つみたて投資枠」は選べず、「特定口座」か「NISA(成長投資枠)」しか表示されません。
- 積立買付(つみたて設定): 毎月自動で買い続ける設定。こちらを選んだ場合のみ、預り区分で「NISA(つみたて投資枠)」が選択可能になります。
私たちが利用するのは「つみたて投資枠」です。必ず「積立買付」や「つみたて設定」と書かれたボタンから設定画面に進んでください。
決済は「クレジットカード積立」がお得
金額は、毎月の生活を脅かさない余剰資金で設定してください。途中で苦しくなって積立をやめてしまっては、複利の力が途切れてしまいます。月1万円でも、5千円でも構いません。まずは「相場に資金を置き続けること」が最優先です。
証券口座に現金を入金して引き落とすことも可能ですが、SBI証券や楽天証券では、提携するクレジットカードで毎月の積立額を決済することができます。
カード決済にすることで、積立額に対して「0.5%〜1.0%程度」のポイントが毎月確実に入ります。相場の上下に関わらず、設定するだけで最初からポイント分のリターンが確定するため、これを利用しない手はありません。
また、配当金(分配金)の受け取り方法を選択する項目が出た場合は、必ず「再投資型」を選んでください。これにより、自動で複利の雪だるま効果が発動します。
おわりに:仕組みは完成した。あとは「忘れる」だけ
お疲れ様でした。ここまでの3ステップで、あなたの資産形成の仕組みは完全に構築されました。
安い手数料で、全世界の企業に分散し、税金をゼロにして、毎月自動で定額を買い付け、ポイントまで獲得する。
これは、現時点で私たちが取れる最も隙のない、数学的に正しい投資行動です。
設定が完了したら、もう証券口座の画面を頻繁に開く必要はありません。
むしろ、見ない方が良いのです。
次回はいよいよ最終回。第7話「最大の敵は『自分の感情』である(長期投資の哲学)」です。
完璧なシステムを作ったにもかかわらず、多くの人が途中で資産形成に失敗してしまうたった一つの理由と、暴落時に絶対にやってはいけない行動について総括します。
