第2話:現代戦の頭脳「防衛エレクトロニクス・通信・航法装置」(三菱電機、NEC、東京計器)
第1話では、43兆円という巨大な防衛力整備計画の「4つの柱」と、その要となる大型兵器を製造する重工メーカーの事実を解説しました。
続く第2話では、重工メーカーが造る「機体」や「船体」の中に組み込まれ、現代戦の勝敗を根本から決定づける頭脳「防衛エレクトロニクス・通信ネットワーク」の領域に迫ります。
第1話の国策の柱で挙げた「1. ミサイルへの対応(防空体制)」や「4. 組織とインフラの強化(指揮統制の統合)」を、実際のシステムやセンサーとして構築しているのは、日本を代表する総合電機メーカーと精密機器メーカーです。
1. 防空網とミサイル誘導のトップ「三菱電機」
家電やFA(工場自動化)のイメージが強いですが、防衛省の契約実績において常に上位(三菱重工や川崎重工に次ぐトップクラス)に位置する、防衛エレクトロニクス分野の最大手です。
【市場での立ち位置と事実】
- 三菱電機(6503):レーダー・ミサイル誘導装置の国内首位
国策の第1の柱である「ミサイルへの対応(防空体制)」の中核を担います。日本の防空網の要である「警戒管制レーダー(FPSシリーズ)」や、イージス艦などの艦載レーダー、戦闘機用のレーダーシステムにおいて極めて高いシェアを持ちます。また、発射されたミサイルを目標へ正確に導く「シーカ(探索・誘導装置)」の製造も担っています。
【高い参入障壁(モート)】
自衛隊の防空レーダー網は、日本全国のレーダーサイトがリアルタイムで連動する巨大なシステムです。過去数十年にわたり蓄積された日本の地理的・電波的なデータと、米国製装備品(米軍のネットワーク)との相互運用性を確保する高度な技術力が求められるため、既存のインフラを長年構築してきた三菱電機から他社への乗り換えは事実上極めて困難です。
2. 自衛隊の神経網を構築する「NEC・富士通」
国策の第4の柱である「組織とインフラの強化(指揮統制の統合)」に直結する、部隊間の通信やネットワークインフラの構築を担うIT・通信のトップ企業群です。
【市場での立ち位置と事実】
3. 有事で動意づく航法装置のスペシャリスト「東京計器」
三菱電機やNECのような巨大な総合企業ではありませんが、株式市場において「防衛関連銘柄」として真っ先に名前が挙がり、有事のニュースで短期資金が集中しやすい(ボラティリティが高まる)代表的な企業です。
【市場での立ち位置と事実】
- 東京計器(7721):航法装置とレーダー警戒装置のニッチトップ
護衛艦や潜水艦が自分の位置と方位を正確に知るための「ジャイロコンパス(慣性航法装置)」において、国内で極めて高いシェアを持ちます。また、戦闘機(F-15やF-2)が敵のレーダー波を感知してパイロットに警告する「レーダー警戒装置(RWR)」の製造も担っています。
【投資家が知るべき事実:なぜ東京計器は株価が反応しやすいのか?】
三菱電機やNECは防衛事業の売上が数千億円規模であっても、会社全体の売上(数兆円)から見れば数%〜10%程度に過ぎず、防衛予算の増額が全社の業績(EPS)に与えるインパクトは限定的です。
一方、東京計器は企業規模(時価総額)が比較的小さく、会社全体の売上に占める防衛・通信機器セクターの比率が高いという事実があります。そのため「防衛予算の拡大」や「地政学リスクの高まり」が直接的な業績向上期待(または思惑)に直結しやすく、株式市場において敏感に反応する性質を持っています。
ここまで、重工メーカーの作る機体に「頭脳」と「神経」を組み込むエレクトロニクス企業を見てきました。
続く第3話では、第1話の国策の柱「2. ドローンの活用」や「3. サイバー・宇宙への備え」を具現化する、現代戦のルールを根底から覆す新領域の企業群と、それを支える「先端素材」の事実を解説します。
