第9話:自然界の黄金比で押し目を拾う「フィボナッチ」
エリオット波動理論によって、相場には「推進波」と「修正波」というリズムがあることが分かりました。しかし、「第2波の押し目は『いくら』で止まるのか?」「第3波の上昇は『いくら』まで伸びるのか?」という具体的な価格の算出ができなければ、注文を出すことはできません。
第9話では、相場の反転ポイントと利益確定の目標値を数学的に導き出す必須ツール、「フィボナッチ比率(Fibonacci Ratios)」について解説します。
フィボナッチと黄金比(1.618)
フィボナッチ比率とは、13世紀の数学者フィボナッチが紹介した数列(1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21…)から導き出される比率のことです。隣り合う数字の比率は、数が大きくなるにつれて「1 : 1.618(黄金比)」に近づいていきます。
この比率は自然界や人工物の最も美しいプロポーションとして知られていますが、実は「人間の無意識の集団心理」がチャートに作り出す波の長さや深さも、このフィボナッチ比率によって高確率で支配されているという事実があります。
1. フィボナッチ・リトレースメント:押し目・戻り目の限界を測る
「リトレースメント(Retracement)」とは「引き返す・後戻りする」という意味です。
推進波(第1波など)が発生したあと、次の修正波(第2波など)が「元の波の何%まで戻して(押して)から反発するか」を測るために使用します。
一般的に意識される主要な数値は以下の3つです。
- 38.2%: トレンドの勢いが非常に強い場合、この浅い位置で押し目をつけて再上昇します。(エリオット波動の「第4波」でよく見られます)
- 50.0%(半値戻し): 数学的な黄金比ではありませんが、市場参加者が心理的に最も意識しやすい「半額」のラインです。
- 61.8%(黄金比): 最も機能しやすい最強の反発ラインです。(エリオット波動の「第2波」の押し目として最も頻繁に出現します)
SMCとの融合:「ディスカウント」と「プレミアム」
第7話で解説したSMC(スマートマネー・コンセプト)において、大口投資家は「絶対に割安な価格でしか買わない」という鉄則があります。
フィボナッチの50%より下を「ディスカウント(割安)ゾーン」、50%より上を「プレミアム(割高)ゾーン」と呼びます。
2. フィボナッチ・エクスパンション:利益確定の目標を測る
「エクスパンション(Expansion / 拡張)」は、次の推進波が「どこまで伸びるか(ターゲット)」を測るために使用します。(ツールによっては「トレンドベースのフィボナッチ・エクステンション」と呼ばれます)。
エリオット波動における「第3波(最も伸びる波)」や「第5波」の終点を予測します。
エクスパンションは、「第1波の長さ」を基準とし、それを「第2波の終点」から上にコピー(投影)して測ります。
- FE 100.0%: 第1波と全く同じ長さ(値幅)です。相場の推進力が弱い場合、ここで第3波が終了し反落することがあります(N計算値とも呼ばれます)。
- FE 161.8%: エリオット波動における「第3波の最も標準的な目標値(ターゲット)」です。大口投資家やアルゴリズムの巨大な利益確定(売り注文)がこのラインに集中するため、到達した瞬間に急反落するケースが多発します。
- FE 261.8%: トレンドが異常に強い場合(巨大なショートスクイーズ等)の最大到達目標です。
おわりに:事実のパズルを組み合わせる
ここまでの「基礎編」「構造編」「リズム・予測編」を通じて、色々な相場の見方を紹介しました。
「ダウ理論でトレンドを定義」し、「SMCのオーダーブロックで大口の罠を特定」し、「エリオット波動で波を数え」、「フィボナッチで正確なエントリーと利確の価格を割り出す」。このように組み合わせて考えてみても面白いかもしれません。
次回、第10話からは「インジケーター・オシレーター編」に入ります。世界中のトレーダーが愛用する移動平均線(MA)の使い方、「グランビルの法則」について解説します。お楽しみに!
